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18世紀後半の「微笑革命」|美容史#9

教科書には載っていない、知られざる美容の歴史を紹介します。

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歯を見せてもOK!18世紀後半の「微笑革命」

微笑む女性は美しい……。しかし、彼女の唇から白い歯がこぼれて見えたら? もちろん今なら誰も気にはしませんが、それを下品と考えたのが、いにしえのヨーロッパの人々です。ルネサンス時代の哲学者エラスムスは、「犬の笑い」とまで言っていますね。

ヨーロッパの上流階級には、美しい微笑みの方法がありました。ちょうどモナ・リザのように、笑うときには唇を一文字に閉じて、口角だけ上げるのです。18世紀のヴェルサイユでも、その事情は同じでした。

しかしフランス王妃マリー・アントワネットは、微笑み方まで作法で縛られることを嫌います。王妃が寵愛した女流画家ヴィジェ・ルブランは、王妃の親友・ポリニャック夫人を描くとき、前歯が少し見えるように微笑ませています。これは18世紀の貴婦人の肖像画としては、革命的なことでした。

1787年、ルーヴルの美術展でヴィジェ・ルブランは、さらにハッキリと唇から白い歯をのぞかせて笑う自画像を発表します。現在から見れば、たおやかな美女の絵ではありますが、大きな賛否両論を引き起こしました。世にいう「微笑革命」です!

しかし、ヴィジェ・ルブランが純白の歯の美女を描けたのも、18世紀フランスの予防歯科技術の高さという背景があるようですね。当時の一般的な歯のケアといえば、ふつうは布で歯をこする程度。真っ白な歯を見せて堂々と笑えるのは、美意識の高い、そして歯のケアに手間暇をかけられる特権階級の証だったのです。

 

 

Profile
堀江宏樹
作家、歴史エッセイスト。古今東西の恋愛・生活文化に造詣が深く、多数のメディアで執筆。著書に『愛と欲望の世界史』『ときめく源氏物語』(共に王様文庫・三笠書房)など。原案監修をつとめる「La maquilleuse(ラ・マキユーズ)~ヴェルサイユの化粧師~」が無料公開中。

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