カナダ ケベックのりんご直売所
秋、新物のりんごが出回ると、かつての旅を想い出す。
9月後半からのケベック州は、緑や黄色、赤、茶色の鮮やかな絵具を重ねたように色づくカエデ林の紅葉が美しい。道路脇にはたわわに赤い実をつけるりんごの木。道端の直売所では、多くの人が焼き立てのアップルパイを買っていた。これはおいしいに違いないと見ると、ホールでしか販売されていない。躊躇している旅人に、店頭のお姉さんがその場でカットし、食べさせてくれた。
フィリングに使ったコートランドという品種は、シャキッと歯応えが残っていて甘酸っぱい。果実の味わいそのものを楽しむ素朴なアップルパイだ。「甘みが足りなかったらメープルシロップ。これにアイスがあれば最高よ」のひと言で、メープルシロップを購入。
あれから何度めかの秋を迎えるが、あのアップルパイの味は再現できていない。今年もチャレンジ!
りんご狩りは長い冬を迎える前の、秋の楽しいレジャーの 1 つ。
ケベック州はフランスの宣教師によって1606年に初めてカナダにりんごが運ばれた地だ。
Profile
朝比奈千鶴
「暮らしの延長線の旅」をテーマに各地を訪ね、文章を紡ぐことを生業としている。旅を通した地域文化継承活動にもかかわる。