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江戸時代の染髪事情|美容史#10

教科書には載っていない、知られざる美容の歴史を紹介します。

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江戸時代の染髪事情

現在では、かなり手軽に行われている印象のある染髪。黒髪を違う色に変える「おしゃれ染め」、白髪を黒くする「白髪染め」など目的は違っても、髪の色を変えることで気分が上向きになることも。しかし、「髪は女の命」といわれていた昔の日本の女性たちは、髪を染めるようなことはあったのでしょうか?

答えは「YES」です。江戸時代後半には白髪染めが「美玄香(びげんこう)」の商品名で、発売されて人気を呼びました。しかし、別名が「黒油」だったことからも分かるように、要は黒い整髪油でしたから、髪を洗えば色も取れてしまったのでした。

明治時代には、薬剤で髪を染める風習が生まれましたが、使用されていのはなんと、お歯黒と同成分の薬液でした。タンニン酸と鉄分が主成分でしたから、髪や地肌が傷む心配が少ないのはいいのですが、髪が染まるまでなんと10時間も放置する必要がありました。

さらにこの薬液には強いニオイがありました。鉄くずや針を焼いてボロボロの粉にしたうえ、麹・酢・酒などを混ぜ合わせ、数カ月ほど暗所で発酵させた液体でしたから。

墨を混ぜた油を整髪油代わりに用いるお手軽な手段もありましたが、簡単に取れてしまうし、高価だった着物を汚す危険性もありました。

いにしえの日本では、髪をキレイに黒く保つことは、非常にハードルの高い行為だったと推察されます。それゆえ、美しい黒髪の価値は、現代以上に高かったのでしょうね。

 

 

Profile
堀江宏樹
作家、歴史エッセイスト。古今東西の恋愛・生活文化に造詣が深く、多数のメディアで執筆。著書に『愛と欲望の世界史』『ときめく源氏物語』(共に王様文庫・三笠書房)など。原案監修をつとめる「La maquilleuse(ラ・マキユーズ)~ヴェルサイユの化粧師~」が無料公開中。

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