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緩急|ここちよく#9-吉本ばななー

作家・吉本ばななさんがここちよいと思うもの・ことについてつづるエッセイ。

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VOL.9 緩急

 

家の中に、古い感じの家具がちょうどよく置いてある場所がある。
そのあたりは朝日の中で見ると、ほんとうに美しい色合いになる。
色褪せた木と、錆びた鉄の椅子。古いカウベルが飾ってあって、そこに陽が射すとうっとりした色合いになる。
夜になるとその魔法は消えてしまう。色が沈んでいる暗い一帯というだけの場所になる。

家の外のメダカが入っている鉢のそばは、午前中だけにぎやかになる。
活発に泳ぐメダカと、水草。タニシと緑の草たち。やってくる蜂。光合成にいそしむ植物たち。
そんな水辺の世界は、その時間帯は活気に溢れていて、気持ちがよい。
しかし冬のその場所はとても淋しくて、しんとしている。ずっと眺めていられないくらいに動きがない。みんな低めにただ生きている。命を維持しているだけの時期。
あの活発な季節がまた来るなんて信じられないくらい。

そういう緩急はきっと人にもあるのだろうと思う。
外に出て、背筋を伸ばして、てきぱき動いたり話したり。
なにかに取り組んで、忙しくして、足のむくみや服のしわにも気がつかないくらい。
よれよれになって、疲れをためて仕事を終える。
そんな時間があるからこそ、家に帰ってしわにならない楽な服に着替えてゆっくりするとき、誰もが幸せを感じる。
出かけられない期間でも、少し緩急をつけると全く違うものだ。
少し外向きの服に着替える時間があるときと、部屋着でずっと過ごすのは気持ちが全く違う。からだの線もきっと変わるだろうと思う。
夜行性の私は夜になると活発になる。
昼忙しく仕事や家事で動き回ったあとに、家に帰って着替えて食事してから、他の人はお風呂に入ったり眠りに向かうところを、私はほんの少し昼寝(夜寝?)をする。二十分くらいでいいし、時間がなかったら少し目を閉じるだけでもいい。
そうすると夜中にたくさん仕事ができる。
晩ご飯からずいぶん時間が経ってしまっているので、ちょっとしたおつまみタイムまで楽しんで、また立ち働いて寝るから胃もたれもない。
夜型の緩急ってそんな感じだ。
人それぞれ、ライフスタイルによって心地よい感覚は違うだろう。
でも、私にとっては、ちょっとした眠りから目覚めて、頭の中がリフレッシュされ、「よし、今夜もがんばるぞ」と思う瞬間の世界は、きらきらと輝いている。
それぞれにそんな時間を持てたら、毎日はうんと楽になるだろうと思う。

PROFILE
よしもとばなな:1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。著作は30カ国以上で翻訳出版されている。近著に『吹上奇譚 第三話ざしきわらし』(幻冬舎)などがある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

イラスト/牛久保雅美

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