
大人のからだを作る7大発酵食/からだを支える、おいしい発酵#1
微生物の力で栄養価がアップした発酵食品には生きた菌がたくさん含まれ、腸内環境を整えます。毎日の食生活に取り入れたい7 種類を専門家に伺いました。
“和食の心”を取り戻し伝統的な発酵食品を食卓に
大豆を発酵させて味噌を作ったり、野菜を漬物にして楽しんだり、発酵食品は料理のおいしさを引き出す調味料や、毎日の食卓の一品として、日本人に親しまれてきました。
「日本の伝統食ともいえる発酵食品の健康・美容効果も科学的に解明されつつあります」と石川森夫先生。
「発酵には麹菌や乳酸菌などの微生物がかかわっています。微生物は発酵の過程で食品の栄養素を体内で消化、吸収しやすい状態に分解しますが、そうした食品を摂ることで腸内環境が整い、新陳代謝や免疫力がアップすることもわかってきました」
さらに石川先生は、「発酵食品のよさを見直すことが、フードロス削減にもつながる」と言います。
「発酵は食品の保存性も高めるので、食材を無駄にしないという利点も。発酵食品を活用すれば、自分の健康増進はもちろん、世界の幸せにもつながるのではないでしょうか」
味噌
大豆の栄養価が酵素でパワーアップ!
「麹菌が大豆を分解・発酵した食品で、旨みや健康のもとといわれるアミノ酸、ビタミンを多く含む。具材の栄養も摂れる味噌汁がおすすめ」(石川先生)
「たんぱく質やビタミン類が豊富。大豆が原料のため、女性の健康を保つイソフラボンや抗酸化作用のあるサポニンなども含みます」(舘野さん)
[主な栄養素]
アミノ酸
たんぱく質
ビタミン類
イソフラボン
納豆
発酵により大豆にない栄養素が出現!
「納豆菌の酵素の力で大豆に含まれるたんぱく質がアミノ酸に分解されることで、腸で効率的に栄養を取り入れます」(石川先生)
「ナットウキナーゼは動脈硬化予防に。ネバネバ成分のポリグルタミン酸は、カルシウムの吸収を促進したり腸内環境を整える効果が」(舘野さん)
[主な栄養素]
アミノ酸
ナットウキナーゼ
ポリグルタミン酸
キムチ
腸活に効果的な乳酸発酵キムチを
「生きた乳酸菌が豊富な、乳酸発酵させたキムチがおすすめ。賞味期限ぎりぎりまで待つと、より乳酸発酵が進み、乳酸菌が増加します」(石川先生)
「腸活に役立つ乳酸菌のほか、ビタミンAやビタミンBも多く、免疫力をアップ。またカプサイシンが刺激となり便通がよくなります」(舘野さん)
[主な栄養素]
乳酸菌
ビタミンA
ビタミンB
甘酒
“飲む点滴” とも呼ばれる優れた栄養バランス
「腸内の不要なカスを絡め取り、善玉菌のエサになる食物繊維が豊富。腸の働きをよくするので、便秘や肌の不調を感じている人に」(石川先生)
「エネルギー源になるブドウ糖や代謝を促すビタミンB群を多く含みます。消化吸収がよいので、胃腸に負担をかけずに栄養が摂れます」(舘野さん)
[主な栄養素]
食物繊維
ブドウ糖
ビタミンB 群
ぬか漬け
ぬかの栄養素が漬けた野菜に凝縮
「豊富に含まれる乳酸菌が腸内環境を整え、免疫力を向上させます。ただし、塩分も高いので食べすぎには気をつけましょう」(石川先生)
「ぬかには疲労回復や皮膚を健康に保つビタミンB1が含まれます。漬けた野菜に染み込むので、生野菜に比べて栄養価がアップ」(舘野さん)
[主な栄養素]
乳酸菌
ビタミンB1
酢
酢酸の刺激で腸の働きが活発に
「酢酸菌がアルコールを分解してできるのが酢。内臓脂肪の減少や血中コレステロールの低下などの効果が。目安は1日大さじ1杯」(石川先生)
「酢酸は腸内で悪玉菌が増殖するのを抑え、ぜんどう運動を促し、便秘の解消に。疲労回復効果があるクエン酸やアミノ酸も含まれます」(舘野さん)
[主な栄養素]
酢酸
クエン酸
アミノ酸
豆乳ヨーグルト
大豆の栄養素で腸内を善玉菌優位に
「豆乳を乳酸発酵させたヨーグルト。腸内善玉菌を増やす乳酸菌と善玉菌のエサとなる大豆オリゴ糖が含まれるので、整腸作用が◎」(石川先生)
「通常のヨーグルトと比べてカロリーが低く、イソフラボンや食物繊維、鉄分も含まれるので、女性の健康を保つのにうれしい効果が」(舘野さん)
[主な栄養素]
乳酸菌
大豆オリゴ糖
イソフラボン
食物繊維
教えてくれたのは…
石川森夫先生
東京農業大学 応用生物科学部 醸造科学科教授・博士(農芸化学)。発酵の名門、東京農業大学で発酵について研究している専門家。『発酵・醸造の疑問50』(成山堂書店)などの共著がある。
舘野真知子さん
料理研究家。管理栄養士として病院に勤務後、アイルランドで料理を学ぶ。発酵料理を中心に活動中。著書に『料理用あま酒、はじめました。』(光文社)など。
イラスト/naohiga 取材・文/みやじまなおみ