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換気|ここちよく#12-吉本ばななー

作家・吉本ばななさんがここちよいと思うもの・ことについてつづるエッセイ。

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VOL.12 換気

 

私はよどんだ空気が苦手で、寒かろうが暑かろうが花粉が入ってこようがどうしても一日に一回は窓を開け放して空気を入れ替えずにはいられない。

それからタクシーに乗っても、ほんの少し窓を開けてしまうくせがもともとあった。運転手さんはよくいやそうな顔をしたけれど、前の人の残り香などが気になってしかたがない。がさつなのにそういうところは神経質なのだ。

コロナ問題がやってくる前からそうだったので、私にとって生活の中での換気については、あまり変わりがなかった。

 

あまり外食したりカフェに行かなくなったとはいえ、たまにお店で座っていると、天候関係なく少しだけ窓が開いていることが多くなった。

前は、外の空気がダイレクトに伝わりすぎない、エアコンによる室温調整と換気がいちばん上等だ、みたいな雰囲気だったけれど、今は細く開いている窓から街の音や生暖かい、あるいは冷たい空気が入ってくるようになった。

すると、ほんの少しだけアジアを感じる。街が近くなったような気分になる。

もちろん日本はいつだってアジアなんだけれど、きっちりと閉まった窓とちょうどいい温度の室内にすっかり慣れてしまい、忘れていた感覚のように思う。

 

バリ島のウブドの道の角に、老舗のオーガニックカフェがある。ほとんど外みたいなテラスっぽい二階の席で、人々はスムージーや青汁やコンブチャという発酵ドリンクを飲んだりしている。地元の人はほとんどいなくて、西洋やオーストラリアからの観光客がほとんどだ。

 

蚊もいるし、うっすら暑いし、椅子も硬いのに、そこにいるとなぜか時間がゆっくり流れる。風が吹いてくるからだ。

夕方から夜になるときの、ズドンと暗くなる感じもいい。

一日はその日の分の重みを持って暮れていくんだな、もう今日と同じ日は二度とないんだな、としみじみ思う。

 

東京にいるとそのことをすっかり忘れてしまうけれど、そして明日も今日と似たような一日がやってくるように思えてしまうけれど、細く窓が開いた飲食店は季節のダイナミックさをわずかに伝えてくれるから、その習慣だけはいろいろ息苦しい時期に変わってよかったことだな、と私は個人的に思っている。

あ、もう夕方の風だ、とからだが感じる。そういうセンサーを失いたくないから。

PROFILE
よしもとばなな:1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。著作は30カ国以上で翻訳出版されている。近著に『ミトンとふびん』(新潮社)などがある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

イラスト/牛久保雅美

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