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「癒やし」の脳科学#2

私たちが求める「癒やし」の正体は、脳が感じる「心地よさ」にありました。「楽しい」「気持ちいい」行動が幸福感を生む脳内物質を活性化!
最新の脳科学研究から、自分に合った「癒やし」の導き方を、そして、日常の中で無理なく実践できるバリエーションをご紹介します。

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五感を刺激して癒やされ上手な脳になる

自分にとってどんな状態が「心地いい」のか、正しく理解していますか?
よい環境や状態を用意して、五感を上手に刺激すると、からだと心が安定して「癒やし」をたっぷり感じることができるようになります。

からだの反応や変化に気づいてください

「癒やし」とは、五感への刺激(外部刺激)に脳が反応し「心地いい」と捉える心の状態、からだの反応です。癒やしとして感じられる外部刺激の種類、強さは、人それぞれ。同じ人でも、体調によって変化もあります。癒やしの性質を一般的に語ることはできますが、万人に受け入れられる方法はないと言っていいでしょう。自分に合う刺激を探すことができるのは自分だけ。好きな香りや音など、自分にとって「癒やし」になる刺激について理解を深めることは、自分自身を知ることにもつながります。
さらに、癒やしの効果はその直後だけでなく、同じ刺激を繰り返し行うことで、効果が高まっていく傾向があります。「朝起きたら、肌のハリを感じた」「最近、寝つきがいい」などの実感が出てきたら、ホルモンや神経がよく働いている証拠。刺激を受けることへのストレスが緩和され、安心感を高めていくことで累積効果が発揮されるのです。

Touchーーー【触覚】

効果のあるマッサージに必要なこと

セルフマッサージでも気持ちよさは感じられますが、自分をくすぐっても平気なのと同じで、脳が刺激を予測するため、効果が半減してしまいます。
マッサージなどの触感による癒やしのポイントは、「信頼感のある他者にやってもらうこと」。自分のからだと時間をゆだねられるという信頼関係が大切なのです。たとえば、エステティシャンやマッサージ師は、初対面でも安心感を与えるための接し方や触り方をプロフェッショナルとして訓練されます。施術の受け手に、無理なく外部刺激を受け入れる心の状態になってもらうことが、効果的な癒やしをもたらすからです。
気に入ったサロンや担当者との出会いがあったら、数回通って、当日と翌日の肌やからだの調子を意識してみましょう。スケジュール帳などに記録をつけておくと、自分自身の変化について気づきが深まるはずです。

<Memo>
ウェアラブル端末でからだの変化を計る

「からだの調子を記録するのは面倒」「ずっと感想を書き続ける自信はちょっと……」という人は、数値を計測してみてはどうでしょう? ブレスレットタイプのウェアラブル端末なら、身につけているだけで、マッサージ前後の心拍や血圧を手軽にチェック可能。施術を受けたことで、からだがどのように反応するかを理解できると、健康への意識そのものも高まります。また、ウェアラブル端末をパソコンやスマートフォンなどに連動させてグラフにすると、からだの変化の様子が長期的に、より具体的に把握できます。シンプルでおしゃれなデザインが多いので、洋服とのコーディネイトもしやすいですよ。

Smellーーー【嗅覚】

好きな香りをかぐと、呼吸が深くなる

アロマテラピーなど、嗅覚によって癒やしをもたらす先人の知恵は、実は呼吸と心拍の関係に由来しています。
人は好きな香りを感じると、無意識に、深くゆっくりと呼吸をし始めます。呼吸がゆっくりになると心拍もそのリズムに同調し、心のリラックスを促す副交感神経が働き始め、落ち着きを感じることができるというわけです。この反応は、自分の好きな香りであれば種類にかかわらず期待することができますから、たとえば好きな食べ物や懐かしいニオイでも同様の働きをします。
呼吸を深くするという点で深呼吸にも同じような効果がありますが、長時間続けると過呼吸になる恐れがありますので、注意してください。

 

嗅覚刺激による呼吸の変化

©Masaoka Yら J. Physiol.566(3) を一部変更

快いニオイをかぐと1回の換気量が増えて、かかる時間も長くなり、1分間の呼吸の回数は減少します。不快なニオイでは逆の現象が起きます。同じニオイをかぎ続けると感じなくなるように思いますが、無意識でも脳はニオイを認知し続けるので、呼吸のリズムは継続。好きな香りを身の周りに置くことは、心の安定に作用するのです。

Tasteーーー【味覚】

テイストとフレイバー、どちらも大切

味わうという感覚には、2つの種類があります。
1つは、舌が感知する味覚。英語で表記すると「taste(テイスト)」になります。味覚で気分が落ち着くのは甘み。糖は脳のエネルギー源なのです。さらに、心を安定させる脳内物質セロトニンの分泌にも糖は欠かせません。セロトニンの原料であるトリプトファン(必須アミノ酸の一種)を脳に取り込むときに必要とされる成分だからです。
もう1つは風味、口中から鼻に抜ける香りを含めた味覚。英語でいうと「flavor(フレイバー)」です。味と香りを同時に感じることでおいしさはアップ。香りのよい好物を食べたときには、満足感がさらに高まります。

口の中で砕いた食べ物の香りが、喉から鼻に立ち上り、嗅覚を刺激し、味覚との複合感覚になるので、人は吐く息で風味を感じます。風邪などで鼻の調子が悪くてニオイが感じられないと、味覚もおかしい気がするのは、そのためです。

 

Sightーーー【視覚】

好きなドラマを見ると脳も癒やしモードに

人は無意識に、怖い表情を見ると自分も怖い顔に、笑顔を見ると笑顔になります。これは視覚による情動中枢「扁桃体」の反応です。扁桃体は本能でとっさに危険や安全を感じる部位。お気に入りの俳優やタレントの表情を見ると心が和むという人にとって、画面の向こうの彼らは安心できるルックスをしていることが予想されます。扁桃体が安心を感じると、呼吸や心拍、筋肉も落ち着きます。寛ぎたい時間にお気に入りの芸能人の番組やDVDを見ることは、脳科学的にもとても効果的な癒やしといえます。

Hearingーーー【聴覚】

ゆったりとした穏やかな声は心を動かす

心を落ち着かせる音には、鳥の声や水のせせらぎ、静かに奏でられる環境音楽などがあります。抑揚少なく語られる、響きのよい声もその1つ。そんな風にして語る相手に対して、人は信頼を感じるという研究もあります。ゆったりとした口調に同調して、自分の呼吸が穏やかになり、心拍が抑えられることで安心感をもち、共感へつながるのです。語られる内容よりも、声の心地よさのほうに影響されやすいというのは少々考えさせられる現象ですが、それほど、人は脳が感じる「快感」に逆らえないということでしょう。

<Memo>
プラセボ効果を上手に利用する

プラセボ効果とは、本来は効果のない薬でも医師など信頼の置ける相手が処方することで、患者の病気が快方に向かうという「偽薬効果」のこと。どうしてそんなことが起きるのか、仕組みはまだ解明されていませんが、脳の思い込みの力は病をも乗り越える力を秘めているのです。「この音楽を聴くと明るい気分になる」「ラベンダーの香りを枕元に置くとよく眠れる」など、ポジティブな感情を誘う習慣や儀式は、広い意味でのプラセボ効果かもしれません。自分にとって意味のあるプラセボをもつことは、脳を上手に癒やすことにつながります。


お話を伺ったのは……

小岩信義先生
こいわのぶよし:人間総合科学大学 人間総合科学研究科教授。五感と情動、脳の関係を研究。著書に共著『ストレスと健康』(人間総合科学大学)、監訳『コンフォート・タッチ―高齢者と患者へのケア&マッサージ』(医道の日本社)がある。


イラスト=スソアキコ 構成・文=杉村道子

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