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夜は、やさし。#3|今月の本「夜想曲集」

私だけの「夜」。本を手に取って想像の世界へ旅立ってみませんか。さまざまな夜の魅力を堪能できる、特別な物語を紹介します。

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今月の本

「夜想曲集」

ノーベル文学賞受賞作家、カズオ・イシグロ初の短編集。老いた大物歌手、流しのギタリスト、売れないサックス奏者など、音楽をテーマに人生の夕暮れどきを生きる者たちの姿を描いた五つの物語を収録。

●カズオ・イシグロ/著 土屋政雄/訳(ハヤカワepi文庫)

 

〝音楽と夕暮れをめぐる五つの物語〟と副題にあるように、どの話からもそれぞれの調べが聞こえてくるような描写が見事な『夜想曲集』。

「人生の終わりの始まり」にたとえた夕暮れどきを背景に描かれる、老歌手や売れないミュージシャンなど、もはや日の当たる場所から離れてしまったような者たちの姿。普通の人々よりも切なく見えてきます。それでも、そんな日常にちょっとした出来事が起き、そのことが人生をおもしろく、豊かにすると気づかせてくれるのです。それは彼らを見つめるカズオ・イシグロの視線の温かさゆえかもしれません。

ある日、辛いこと、やっかいなことが起きたとしても、それは変化。新たな気持ちで人生を楽しむチャンス──。読後には、切なさと共にそんな前向きな気持ちになっていることに気づくでしょう。

 

文=植田広美 イラスト=芳野

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