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夜は、やさし。#5|今月の本「幾千の夜、昨日の月」

私だけの「夜」。本を手に取って想像の世界へ旅立ってみませんか。さまざまな夜の魅力を堪能できる、特別な物語を紹介します。

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今月の本

「幾千の夜、昨日の月」

人気作家であり、行動派の筆者が体験した、夜にまつわる記憶をじっくりと取り出したエッセイ。軽快な文体ながら、旅先での強烈なエピソードなど、非日常を追体験できる鮮やかな描写が魅力。読後にはきっと夜を意識したくなる。

●角田光代/著(角川文庫)

 

「子どものころには夜がなかった」。そんな一節で始まる『幾千の夜、昨日の月』。夜にまつわるさまざまな記憶を手繰り寄せ、紡がれたエッセイ集です。

大人の所有物のように思っていた夜におびえ、月の砂漠で過ごした夜に心を震わせ、病院の開かれた夜に安堵する。旅を好む筆者の体験する夜は、世界各地、本当にさまざまで、そこには非日常が広がっています。夜に恐怖を覚え、避けようとしながらも、いつしか夜に魅せられていくような感覚に、共感する人も多いかもしれません。

都会の夜がどんどん明るくなっていったのは、孤独であることに気づきたくない人が大勢いるからだという筆者。しかし、そんな明るさの中にいても、自分は一人だと気づいてしまうだろう、とも。

読後に迎える夜は、きっと新鮮なものになっているでしょう。

 

文=植田広美 イラスト=芳野

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