<初回購入特典>2,000円(税込)以上ですぐに使える300ポイントプレゼント!

Welcome

こんにちは、ゲスト さま

0 ポイント

0 コイン

0 

還元率 0 %

メッセージボックス

  • マイページはログイン後にご使用いただけます。

ページ内を移動するためのリンクです。

ライフスタイル 1559 view

重ねるほどに美しく#1|自然の流れに抗わず、未知の変化を楽しむ家

第一回:自然の流れに抗わず、未知の変化を楽しむ家
伊藤寛治さん・松太郎さん(伊藤工務店)

 

どうすれば、自分らしく歳を重ねていけるだろう? どうすれば、今日より明日、そして数年後の自分を楽しみに感じられるだろう?そのヒントを求めて、さまざまな分野で活躍する美の匠を訪ねる新企画「重ねるほどに美しく」を始めます。時の経過を大切にとらえ、未来に残る仕事を続ける職人たち。ここでは、そうした職人が生み出すものと、その一途な仕事ぶりから、年月を重ねることによって引き出される魅力を紐解きます。

第一回目の職人は、長野県・山梨県の木材を使用し、無垢の木にこだわった建築を手がける伊藤寛治さんと松太郎さんの親子。伝統的な家づくりを愛してやまない二人が考える、「年月を重ねるほどに美しさを増す家」とは?

林の中に佇む伊藤親子の自宅。伊藤寛治さんが数年をかけて手がけました。

伊藤さん親子のお仕事|地場の木にこだわった家づくり

長野県諏訪郡。八ヶ岳を北に望む、緑深い土地に伊藤工務店はあります。アカマツやカラマツ、スギ、ケヤキなど、さまざまな木々に囲まれた自然豊かなこの地で、代表の伊藤寛治さんは、40年以上にわたって木造建築専門の工務店を営んできました。

伊藤工務店が生み出す建築の何よりの特徴は、長野県と山梨県の地場の木を使っていること、そしてこの土地の気候や風景になじむ建物であること。これまで、戸建てや別荘、山荘など、多くの木造建築を手がけてきました。

伊藤工務店が関わった北アルプスの最深部、標高2,600mの高地に建つ雲ノ平山荘は「登山者の憧れ」といわれる名建築です。「ヘリコプターで木材を運び、2カ月おきに現地と作業場を行ったり来たり。積雪に耐えうる木造建築を造るのは、平地の家とはまた違った難しさがありました。」

伊藤さんが教えてくれた、いい建築の3条件

では、寛治さんの考える「いい建築」とはどのようなものでしょうか? そう問いかけると、淀みのない口調で3つの条件を教えてくれました。

「まず、屋根には瓦を使うこと。瓦は初期費用がかかるけど、塗り替えもいらず半永久的に長持ちするから。次に、軒を2mほど広くとること。日本は雨の国ですからね。木造建築の場合、外壁が雨で濡れっぱなしになると木が腐ってしまうでしょう。最後に、国産の無垢の木だけを使うこと。最近は小さく切った木材を接着剤でつないだ“集成材”が主流だけど、丸太から切り出したままの無垢の木の美しさには遠くおよばないですよ」

寛治さんの話を捕うように「無垢材にも適材適所があるんですよ」と話すのは、息子の松太郎さん。松太郎さんは東京の美術大学でデザインを学んでいましたが、在学中に「やっぱり大工になろう」と思い立ち、埼玉県川越市にある工務店で8年間修業。近ごろ実家へ戻り、父・寛治さんの右腕として、技に磨きをかける日々を過ごしています。

木は種類によって色や木目の模様、強度、耐水性がさまざま。それぞれ個性があって、とても豊かな表情を持っているんです。家の中心を貫く梁には曲線が見事なアカマツ、屋根を支える垂木(たるき)にはカラマツ、大黒柱と床にはどっしりとした存在感のクリ、柱にはまっすぐに伸びるヒノキというように、各々の持ち味を最大限生かすのが、私たちの仕事です」

伊藤宅のリビング。10m以上もある見事なアカマツの梁が、天井を貫いています。

美しい家ほど強い。信じる道を、ただひたむきに

地場の無垢材を使うことのほかに、伊藤さん親子がこだわっているのが、木と木の接合部に釘や金物を使わない「継ぎ手」という技法。手間と熟練の技を要するやり方ですが、その分、強くてしなやかな骨組みを造ることができます。

「私が修業し始めたのは、家が簡易的な造りに変わっていった時代。安くて早い工法がもてはやされる風潮に、“おかしいんじゃないかなあ”と抵抗を感じていた。そんなとき、飛騨高山にある見事な継ぎ手の古民家に出会って、これだ!とピンときましたね」

この日お話を伺ったのは、風格のあるたたずまいが美しい、ご自宅と事務所を兼ねた建物。父・寛治さんが仕事の合間をぬって数年がかりで造り上げた、伊藤工務店の哲学を体現する建築です。ここにもやはり、継ぎ手の技術が使われていました。

木はたわみやすい素材。柔軟性のない金具を使うと、木材本来の形に負荷がかかり、負けて傷んでしまうことがあるんです。何十年も安心して住める家を造るには、やっぱり継ぎ手が一番でしょうね」。そんなふうに話す松太郎さんの口調からは、父と同じ、自身のこだわりをまっすぐに貫く姿勢がにじみ出ていました。

伊藤工務店の建築の細部に目をこらすと、柱や梁、部材の組み合わせすべてに釘や金物が一切使われていないことに驚かされます。

自然の摂理に逆らわない。自然とともに生きる姿勢

「いつの時代も人間は、身近にある素材で家を造ってきたんですよ。私たちの場合、それは木。だから先人たちは、木とうまく付き合う方法をずうっと模索してきた」

無垢の木は生きています。森から切り出した後も呼吸をやめないため、時を経て、ゆがんだり変形したりすることがあります。そんな状態のことを、伊藤さんたちは「木が狂う」と表現します。木の狂いを少なくするには、しっかり乾燥させることが大切。丸太の場合、5〜6年ほど寝かせた後、やっと建材として使えるようになるといいます。

「こんなに長く木と付き合ってきても、思い通りにならないと感じることが多いですね。セオリー通りにやっても、必ず読み切れない部分が出てくる。でも、たわみやすいという木の特性は人間にとってはデメリットに映るけど、木にとっては大事な個性であり、自然の摂理そのもの。自然を相手に生きるには、“予測できないこともある”と心に余白を残しておく姿勢が欠かせない。それを木との付き合いで学んだんですよ」

自宅に隣接する作業場でカンナがけの準備をする松太郎さん。

 


伊藤さん親子が生み出す木造建築の奥深い魅力、いかがしたか? 家づくりにおいて伊藤さんが大切にする姿勢は、私たちの生き方にも通じるもの。自然の流れに抗わず、未知の変化を受け入れ楽しむことができれば、自分らしくここちのよい歳の重ね方ができるように感じました。

 

さて、次回のテーマは、「年月を経てなお輝く、木造建築の魅力」。伊藤さんたちが手がけた住宅を訪れ、そこに住まう方に住みごこちをお聞きします。8月上旬ごろの公開をお楽しみに。
チェックする>


<プロフィール>
伊藤寛治・松太郎(伊藤工務店)/大工

1984年設立。長野県・山梨県を中心とした自然豊かな土地で、無垢の木を生かし、気候や風土に合った建物を手がける。「継ぎ手」と呼ばれる伝統的な工法を用いるのが特徴。身を置くだけで気持ちが良くなる温かみに満ちた家は、次世代からその次の世代まで引き継げる、長く愛せる家として定評がある。