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食べることを大切にする、ということ|今日から始める「食美容」#1

作家の朝吹真理子さんがエッセイでつづる「食」の風景。毎日のことだからこそ、あなたも改めて見直してみませんか?

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朝吹真理子さん特別寄稿
「食べることを大切にする、ということ」

料理家のまみさんの家で、ときどきお昼をいただく。疲れているときほどおじゃましたくなる。

まみさんの家のキッチンは二階にある。階段をのぼってゆくと、採光の大きい窓がいくつもあって、光が部屋全体にさしこんでいる。洗いざらしの清潔なリネンの敷かれた長方形のテーブルのうえに、いつも季節の花がいけてある。蘭を鉢植えから外して飾っていたとき、根のやわらかいみどりの美しさにおもわずみとれた。たまごの殻のような質感の古いお皿、磨きぬかれたカトラリー、それが静かに用意されている。

まみさんのキッチンは、お鍋もカトラリーもいつもぴかぴかに光っている。木製の棚には、真っ白いふきんが畳まれてある。そのなかでもくもくとまみさんが料理をつくる。日々手入れをしている空間だから、こんなに清らかなのだろうと思う。

野菜を洗ったり、きざんだりするときに、まみさんの手が水に濡れて光る。料理家は肌のきれいなひとが多いときいたことがある。食べることを大切にしているし、いつも油分と水分のあがるところに長い時間いるからなのかもしれない。まみさんの肌も、いつも透き通っている。

まみさんの家は白が多い。衣服の白、壁の白、クロスの白、お皿の白。白に白を重ねる。新雪のような白から生成りのやわらかな白まで、白にもたくさんの階調があることを感じる。

その日は鍋料理だった。野菜と、面片(メンピェン)という小麦粉を捏ねてのばして発酵させた麵を、手でちぎってゆがいて食べる。さっきまで階段の手すりで干していたのだとまみさんが言う。沸騰する鍋にもっちりした白い麵をちぎってはいれる。いいあんばいのところで野菜といっしょに食べる。とけかけたり、弾力があってもちもちしていたり、ちぎったおおきさで食感がかわる。湯気を浴びて顔がしめってゆく。

おいしい、という言葉しかでなくて、みんなで顔を明るくさせて食べていた。冬の光のなかで、湯気がのぼりつづけて、体の中からあたたかいものを食べているからか、私たちの体も隅々まで清潔に、透明になってゆきそうだった。

 

 

 

Profile
朝吹真理子さん

作家。1984年、東京生まれ。2009年、『流跡』でデビュー。2010年、同作でドゥマゴ文学賞を最年少受賞。2011年、『きことわ』で芥川賞を受賞した。最新作『TIMELESS』(新潮社)が発売中。

撮影/田村昌裕(freaks) スタイリング/高上未菜 ヘア&メイク/吉川陽子 モデル/阿久津ゆりえ コーディネイト/中島宏枝

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