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ここちよく、前向きに生きるためのヒントを、著名な女性の言葉や映画のセリフなど、今なお色鮮やかに残る“名フレーズ”から導きます。

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勇気が君を拒むならその上をいけ

If your Nerve, deny you—Go above your Nerve.

映画『わたしに会うまでの1600キロ』 より


映画『 わたしに会うまでの1600キロ』(2014)は作家シェリル・ストレイドがアメリカ西海岸を南北に縦走するパシフィック・クレスト・トレイルを一人で歩き通した体験談をもとに作られた映画です。

1995 年、母親を病で亡くし生活も荒れていたシェリルは、いくつもの山脈を越えていく厳しい自然歩道の旅で、自分を見つめ直す決心をしました。旅人たちが言葉を残すためにトレイルの各所に置かれたノートに、彼女は自分の好きな詩の一節を書いていきます。そのうちの一つで、最も印象的なのが実在したアメリカの女性詩人エミリー・ディキンソン(1830-1886)のこの言葉です。

 

19 世紀、マサチューセッツ州アマーストで生まれたエミリーは厳格な清教徒の家庭で育ちました。成績優秀で女子大に進学しましたが、大学を中退した17 歳以降は主に家庭内で過ごし、詩作をしながらひっそりと暮らしていたため、生前は有名になることはありませんでした。

彼女が書き残した数多くの詩が注目されるようになったのは、エミリーが55歳で生涯を閉じてからのことでした。エミリー・ディキンソンの残した1,700 以上の詩からは、静かに生きてきた彼女の内にある情熱と自由への渇望が伝わってくるかのようです。

 

シェリル・ストレイドが引用したエミリー・ディキンソンの詩からは、今ある自分自身を越えていきたいというシェリルの強い意志を感じます。それまでの自分だったら怖気づいて、後ずさってしまうようなことをやってみたいという思いが、ここに込められています。

エミリーのこの詩には、「魂がシーソーのように揺れるならば、肉体の門を持ち上げていけ」というフレーズもあります。これはきっと、迷いを捨てて一つの目的に向かって身も心もすべてを捧げることで、越えられる限界があるという彼女のメッセージなのです。

 

エミリーの言葉をお守りのように大事にして1,600キロの山道を歩ききったシェリル・ストレイドは、目の前の風景がパッと開けるような境地に至ります。

 

 

 

引用元:『わたしに会うまでの1600キロ』 監督:ジャン=マルク・ヴァレ 主演:リース・ウィザースプーン 字幕:佐藤恵子

Profile
山崎まどか
コラムニスト、翻訳家。『ビバ! 私はメキシコの転校生』(偕成社)でデビュー。著書に『優雅な読書が最高の復讐である』(DU BOOKS)など。

イラスト/黒木仁史 構成/中島宏枝

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