
心を豊かに育む|名フレーズに学ぶあなたらしさのヒント#11
ここちよく、前向きに生きるためのヒントを、著名な女性の言葉や映画のセリフなど、今なお色鮮やかに残る“名フレーズ”から導きます。
頭、心、知能、すべてに関わりがありますから。
フランソワーズ・サガン(小説家、脚本家/1935 - 2004)
1954年、18歳のときに『悲しみよこんにちは』で、フランスの文芸界に鮮烈なデビューを果たしたフランソワーズ・サガン。
10 代の少女のアンニュイな青春を描いたこの小説によって彼女は、同時代の若者の代弁者となりました。若く、美しい少女だったサガンはその一挙手一投足に話題が集まり、スターのような存在になっていきます。
美術界や映画界のセレブと付き合って華やかに旅行し、パリで遊ぶ彼女の生活はゴシップ誌を賑わせたのです。ギャンブルと車が好きで、大変なスピード狂でもあったサガンは、1957年には愛車のアストンマーチンで大事故を起こし、瀕死の重傷を負っています。
サガンはインタビュー集『愛と同じくらい孤独』でその頃の自分について、「スキャンダルを起こすお嬢さんであり、ブルジョワの作家だった」と答えています。
自分が不器用で若く、若者特有の残酷さのために事故を起こしたことについて、彼女は深く内省しています。10 代終わりから20 代にかけて、注目を浴びながら作家として活動を続け、女性として、人間として成長していくことは決して楽なことではなかったと思います。
そのなかで得たものについて彼女が語るこのインタビュー集からは、愛や孤独、人間関係についてのサガンの考え方が垣間見えます。
なかでも興味深いのが、人が持ち得る最もいい性質として、彼女が“想像力”を挙げていることです。サガンは想像力こそが他者への理解の源だと語っています。その人の身になって考えることによって、思いやりが生まれるのです。
友人や知り合いの表情や行動で気になることがあったなら、電話をして話をしてみようと考えられる。それが取り越し苦労の勘違いで、たとえ恥ずかしい思いをしたとしても構わないとサガンは言います。「想像力は体面よりも重要です」
39歳の女性を主人公にした小説『ブラームスはお好き』を書いた時、サガンはまだ24歳でした。若い彼女が大人の女性の孤独と強さを描けたのは、想像力が成せる業なのでしょう。
引用元:『愛と同じくらい孤独(新潮文庫)』 訳:朝吹由紀子
Profile
山崎まどか
コラムニスト、翻訳家。『ビバ! 私はメキシコの転校生』(偕成社)でデビュー。著書に『優雅な読書が最高の復讐である』(DU BOOKS)など。