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『ことばの食卓』|ひとり時間は読書時間#1

心がほっとあたたかくなったり、生きるヒントを得たり……。幸せな気づきを与えてくれる一冊を、コラムニスト・山崎まどかさんが紹介します。

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休日の一冊

『ことばの食卓』(ちくま文庫)
武田百合子・著
何げない日常の光景や食べものに関する昔の記憶と思い出を、感性豊かな文章で綴ったエッセイ集。

夫である作家の武田泰淳と娘の花ちゃん、家族3人が富士山荘で過ごした日々を綴った『富士日記』を1977年に発表して以来、武田百合子さんはエッセイの名手として知られてきました。

子どものようにまっすぐに物事を見て、気取らない言葉でその感性を的確に伝える生命力にあふれた文章は、今読んでもとても鮮やかです。彼女の目に映ると、平凡な日常や風景もまったく違うものに感じられます。そのヴィヴィッドな感性に触れると、エネルギーをチャージされたような気持ちになるのです。

『富士日記』でも日々の食事の記録が印象的でしたが、『ことばの食卓』では、食に関する描写が堪能できます。子どもの頃の雛祭りに祖母が病床の彼女に運んでくれたお膳の話や、元日に見に行ったサーカスの席で親子が食べていたおでんの匂い。特別なご馳走の話はないけれど、胃袋とハートを締めつけるような“食の記憶”があふれています。

とりわけ亡き夫との思い出を書いた冒頭の「枇杷」は名エッセイ。果汁のように愛と官能が行間から滴り落ちるようです。

 

Profile
山崎まどか
コラムニスト、翻訳家。『ビバ! 私はメキシコの転校生』(偕成社)でデビュー。著書に『優雅な読書が最高の復讐である』(DU BOOKS)など。

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