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きょうの夢ごこち|小林エリカさんエッセイ#6

作家・小林エリカさんのスペシャルエッセイをお届けします。

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きょうの夢ごこち|小林エリカさんエッセイ#6

甘いものを食べると、ただそれだけで幸福感を味わえるのはなぜだろう。

とりわけ私が好きなのは、はちみつを舐める、というやつである。黄金色のとろりとした液体(あぁ、なんて美しい!)。その感触とやわらかな甘みが口の中に広がると、身体全体が暖かなものに包まれるような気持ちになる。

 

かつて東京の街で養蜂をしている友人に、ミツバチについて色々教えてもらったことがある。

そもそも東京で、はちみつを採ることができるだなんてことに驚いたが、意識してあたりを見回してみると、案外大都会の真ん中でも、屋上なんかに巣箱が置かれていることに気づく。ビルの谷間の街路樹に、花壇に、花屋の軒先に、目を凝らしてみると、ふっとミツバチが飛んでいたりする。

ミツバチは人間の目には見えない紫外線の光を見ることができるらしい。そうして花の真ん中にある雌しべや雄しべを、いとも簡単に見つけることができるのだという。ただそのかわり、人間には赤に見える色が見えないのだそう。ミツバチの目に映る世界を想像してみると、面白い。

驚いたのは、ミツバチというのはその全ての働き蜂が雌だということ。一匹の女王蜂と、たくさんの雌の働き蜂。では雄の蜂というのは一体全体何をしているのかと尋ねたら、とにかく働かずにダラダラしているらしい。とはいえ、そんな雄蜂も女王蜂との交尾のためにはがんばるのだが、交尾を成功させた挙げ句にはその身体が破裂して死んでしまう仕組みになっているのだとか。

われらが人間社会もなかなか大変ではあるが、蜂の世界もなかなか楽ではない。

 

ところで、ミツバチ一匹が一生かかって集めるはちみつの量は、たったのティースプーン一杯分。私はそれを口にしながら、なんだか申し訳ない気持ちと、ありがたい気持ちでいっぱいになる。もうすぐ春がやってくる。

 

 

文と絵
小林エリカ

作家・マンガ家。『マダム・キュリーと朝食を』(集英社)で芥川賞・三島賞候補に。新刊は光の科学史を辿る『光の子ども3』(リトルモア)、『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社)

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