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きょうの夢ごこち|小林エリカさんエッセイ#8

作家・小林エリカさんのスペシャルエッセイをお届けします。

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きょうの夢ごこち|小林エリカさんエッセイ#8

窓を伝って雨粒が流れ落ちてゆく。水滴と水滴はときにぶつかり、ひとつになって、ときにまたばらばらになる。雨の日には自転車に乗れないし、低気圧で頭も痛くなるし、空は薄暗くて憂鬱になるけれど、そんな季節も、窓にくっついた雨粒を見ていると、飽きることがない。

私はいわゆる雨女なのか、大事なときには大概雨に遭う。旅先の思い出はいつも雨。だから、各地の旅先で慌てて買った折りたたみ傘が、溜まってしまった。そろそろ、雨女を認め、トランクには必ず傘をいれるべきなのかもしれない。

雨が降らないといわれるロサンジェルスへはじめて旅行したときにまで、雨と嵐に見舞われたのには、さすがに驚いた。

 

まあ、たしかに雨がなくては農作物も育たない。雨は感謝すべき存在には違いない。かつて先祖たちは雨を降らせるために、雨乞いの祭りや祈りなんかを捧げていたというが、そういうところに生まれなかったのが残念に思えるくらいだ。でも科学の進歩で、この頃は人工的に雨を降らせることまでできるようになったのだから、そんな私の技量ももはや必要ないのかもしれない。

科学者アーヴィング・ラングミュアが考案したのは、ヨウ化銀で雨雲の中の雨粒を成長させ、人工的に雨を降らせるという仕組み。実際、北京オリンピックのときには、ヨウ化銀を1000発以上のロケットで空に打ち込み雨を降らせ、天気予報を覆し開会式を晴天で迎えさせたのだとか。いまや、サウジアラビアでは人工の月を浮かべ、人工的な雨を降らせる未来都市を創る計画までもちあがっているそうである。

 

いつの日か、雨が降ることさえも偶然でなくなるかもしれないと考えると、突然の雨に見舞われ、ずぶ濡れになるきょうの日が、どこまでも愛おしいものに思えてくる。

 

 

文と絵
小林エリカ

作家・マンガ家。『マダム・キュリーと朝食を』(集英社)で芥川賞・三島賞候補に。新刊は光の科学史を辿る『光の子ども3』(リトルモア)、『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社)

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