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きょうの夢ごこち|小林エリカさんエッセイ#9

作家・小林エリカさんのスペシャルエッセイをお届けします。

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きょうの夢ごこち|小林エリカさんエッセイ#9

我が家のリビングにはビルトインの、寝室には据えつけ式のエアコンがとりつけられている。外はどれほど蒸し暑くとも、エアコンをつければ、たちまち狭い部屋の中は涼しくなって、実に快適になる。

 

私が子どもだった頃、学校にはまだエアコンがなかった。いくら今ほど温暖化が進んでいなかった時代とはいえ、窓を開けようが何をしようが、やはり暑い夏は暑い。中学生になって自分の部屋にはじめてエアコンが設置されたときの驚きと感動は、いまでもはっきりと覚えている。新品の白いエアコンからは、魔法のように冷たい空気が流れでる。なんて素晴らしい機械! なんて快適なんだ!

 

去年の夏、カナダから友人のテーガン・ムーアというアーティストが我が家に遊びに来た。環境をテーマに作品をつくっている彼女と話していたら、次回作はエアコンをテーマにする予定だと教えてくれた。話を聞けば、なんとエアコンというのは、かつて印刷工場で発明されたものだという。インクの定着が紙に一定になるように、湿度と温度をコントロールする過程で、それは生み出されたのだそう。

調べてみると、1902年、アメリカ、ニューヨーク州ブルックリンの印刷工場に納めた印刷機を調整するために、ウィリス・キャリアという人物が発明したのだとあった。果たしてエアコンをモチーフにした彼女の作品は体験型で、私はそれを写真で見ることしかできなかったのは残念であった。

 

それにしても、どんな魔法にも、素晴らしい技術にも、代償はついてまわるのかもしれない。氷が溶けてゆく北極のしろくまの写真を目にするたびに、私は後ろめたい気持ちにもなる。とはいえ、いまのこの快適な空調技術があるのも印刷のおかげというのは、なかなか感慨深い。涼しい部屋の中で、本を開いてみる。

 

 

文と絵
小林エリカ

作家・マンガ家。『マダム・キュリーと朝食を』(集英社)で芥川賞・三島賞候補に。新刊は光の科学史を辿る『光の子ども3』(リトルモア)、『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社)

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