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それでも髪を美しく! 自然発火するくし|美容史#7

教科書には載っていない、知られざる美容の歴史を紹介します。

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それでも髪を美しく! 自然発火するくし

くしは人類最古の美容道具だといわれています。女性の美しさを象徴するものといえば、つややかな長い髪だった時代が長いので、女性の暮らしと共にあり続けました。髪飾りとしても人気でした。

19世紀の欧米社交界のマダムたちの間では、長い髪をアップにしてまとめ、豪華なくしを飾るスタイルが大流行します。ベッコウを素材として宝石、パールをちりばめたくしは、上流社会での結婚祝いの定番品です。くしを髪飾りにすることは、「私は既婚女性です」という周囲へのサインにもなったのですね。

しかしベッコウは亀の甲羅が原料です。人気が出るほどに価格は上がって3倍になり、動物虐待を避ける観点からも代替品が求められるようになりました。こうして、開発されたのがセルロイドくしです。セルロイドはプラスチックの一種ですから、加工もしやすく、安価で大人気となりました。

しかし、セルロイドくしには思わぬ危険がありました。素材が熱に弱すぎるのです。暖炉の傍に1時間いるだけで、発火する事件が相次ぎました。暖炉の手入れをしようと女性がひざまずいた瞬間、くしが爆発するケースまであったといいます。

美しいけれど、死の危険を秘めたセルロイドくし。恐ろしいことに人気は衰えませんでした。しかし20世紀初頭、モダンな女性たちの間でショート・ボブの髪型が流行り始めると、髪飾りとしてのセルロイドくしの人気はとたんに凋落。見向きもされなくなったのです。

 

 

Profile
堀江宏樹
作家、歴史エッセイスト。古今東西の恋愛・生活文化に造詣が深く、さまざまなメディアで執筆中。『愛と欲望の世界史』『ときめく源氏物語』(共に王様文庫・三笠書房)など著書も多数。

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