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きょうの夢ごこち|小林エリカさんエッセイ#11

作家・小林エリカさんのスペシャルエッセイをお届けします。

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きょうの夢ごこち|小林エリカさんエッセイ#11

マンションの植え込みによく目を凝らしてみると、一枚の葉の裏に蟬(せみ)の抜け殻がくっついていた。小さな手足の格好までくっきりとわかる綺麗な抜け殻だ。私はそれをこっそり手のひらの上に載せてみる。琥珀色のそれは薄張りのガラス細工みたいに精巧だ。

それにしても、あたりはビルとアスファルトばかり。それでも、こんなわずかばかりの小さな植え込みの地面の下でこの蟬の幼虫が眠っていたとは。そういえば、確か蟬は随分長い時間を地中で過ごすのではなかったかと調べてみたら、アブラゼミは7年とあった。とはいえ、もっと短いという説もあるらしく、種類によっては1年から5年だそうだが、いずれにしても長い時間である。

この抜け殻の主が、このマンションの植え込みの地面の下に何年間も居たのだと思うと、私は深い感慨を憶えずにはいられない。ひょっとしたら、私がこのマンションに暮らし始めるより前から、かの主はここに居たのかもしれないのだから。

 

蟬について調べているうち、羽化する瞬間というのをネット動画で見た。その姿はなんとも神秘的で、広げたばかりのその羽色は翡翠(ひすい)色だった。いつかそれを本当に見てみたいと思うが、蟬は飼育が難しいらしいから、ただひたすら奇跡のような瞬間を探して待たねばならない。

平安時代のかさね色目には、「蟬の羽(は)」と呼ばれる檜皮(ひわだ)色と青緑の組み合わせがあるそうだ。千年以上前を生きた人たちもまた、それを見たいと思ったし、美しいと思ったのだろう。それにしても、「蟬の羽」を薄衣で纏うとは、なんという粋。

 

日に日に夏の終わりが近づくと、マンションの踊り場にすっかり弱った蟬が横たわっているのを見かけるようになる。たったひと夏の命に、胸が締めつけられるような気持ちになるが、このすぐちかくのどこかの地面の下には、すでにたくさんのものたちが何年も眠っているのだと思うと、また次の夏が待ち遠しくなったりもする。

 

 

文と絵
小林エリカ

作家・マンガ家。『マダム・キュリーと朝食を』(集英社)で芥川賞・三島賞候補に。新刊は光の科学史を辿る『光の子ども3』(リトルモア)、『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社)

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