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【マンガでひも解くスマートエイジング第2回】「誰でも船は出せる」。大海原へ漕ぎ出した、65歳のヒロイン。

新旧話題のマンガ作品からヒントをもらい、「スマートエイジング」について考える連載「マンガでひも解くスマートエイジング」。第2回にピックアップするマンガは…？

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オルビスには「スマートエイジング」という、「自分らしく、ここちよく年齢を重ねる」ことを大切にする考え方があります。スマートエイジングについて思う時、ふと浮かんでくるのは「そもそも、自分らしさとは？」、「美しさとは？」という根本的な問い。新旧話題のマンガ作品からヒントをもらって、一緒に考えてみませんか。スマートエイジング研究会マンガ支部部長　トミヤマユキコさんライター、東北芸術工科大学芸術学部講師。専門は日本のマンガ、文学、フードカルチャーなど。近著に『少女マンガのブサイク女子考』（左右社）がある。部員　編集M マンガデビューは「姫ちゃんのリボン」から。毎晩、就寝前のマンガは欠かさない。本日のマンガ「海が走るエンドロール」たらちねジョン ©︎たらちねジョン／秋田書店／2021 夫と死別し、数十年ぶりに映画館を訪れた65歳のうみ子。そこでの出来事をきっかけに、うみ子は自分が「映画を撮りたい側」の人間だと気づく。周囲や自分の中にあるエイジズムと対峙しながら、新しい世界に飛び込む姿に勇気づけられる作品。既刊1巻ト：マンガを読む私たちが大人になっていく中、マンガの中のヒロインも着実に年を重ねていっておりまして… M：この連載の話をトミヤマさんにした時に、まず挙がったのが「海が走るエンドロール」でしたね M：主人公は夫と死別して四十九日が過ぎたばかりのうみ子さん。65歳。ト：このうみ子さんがね、ちゃんと“ヒロイン”なんですよ。ヒロインって、「自分で考えて行動する」、「未知なる世界へ飛び込む勇気がある」のが条件だと、私は思っていて M：“未知なる世界”がうみ子さんの前に開けた瞬間、すごく印象的でしたト：65歳で、このまま、今まで通り生きていっても支障はなかったと思うんですけど、あえてもう1回ト：自分のいる場所から、外側の世界に飛び込んでいくんですよね。そこで、どこの誰とも分からない、新しい自分になるっていうのも、私はこの作品のすごく好きなところですねト：しかも飛び込んだ先が、美大、映画の世界。これといった正解もなければ、頑張れば必ず見返りが約束されるわけでもない上にト：自分の軸はどこにあるのかとか、自分にとっての信念は何なのか、みたいなことを確認しなくちゃいけない領域を選んでいるのも、多くの人がハッとさせられるところだと思います M：第2話の最後で、美大に願書をもらいに行くうみ子さんは、髪をばっさり切って、襟付きのシャツに、パンツに、ローファーなんですよね M：その背中を見たところからもう1巻の最後まで、私ずっと涙ぐんでました（笑）ト：船を、出したんだなってねト：何かを始めるのに遅すぎるということはない、みたいな言い方は世の中にたくさんあるけれどト：うみ子さんの「誰でも船は出せる」という言葉は、それがもうちょっと具体的にイメージできるのがよくてト：自分なりの船を、自分なりの水辺に、とりあえず出してみようかなって、優しく背中を押してくれますよね M：そうですね。その船を出したうみ子さんが、急に変に若返ったりとかしないのも、誠実ですごくいいなと思いました M：若返りはしないけど、中に燦然ときらめくものが、確実にあって… ト：第5話の表情が、まさにそうですねト：きれいだし、可愛くもある。大人の女性の美しさの中に、少女みたいなピュアネスを感じる顔ですよね M：そうなんですよ。内側に潜んでいたときめきや輝きみたいなものが滲み出て、うみ子さんをすごく魅力的に、美しく見せているなと感じました M：うみ子さんの言葉で「取り返せないものがあることを」「クラスメイトよりは知っている」っていうのがあるんですけど M：でもまた、失われないものもきっとあると、うみ子さんのこの表情を見て思いました。そして涙ぐみましたト：まだ1巻の時点でこれですからね。本当に、本当に輝くシーンは、これからだろうなと思うと高まりますね M：ですね〜。美大生になって、年の離れた先輩や同級生に囲まれる中で、ちょっと居心地の悪さを感じたり M：「おばさんだから」という自虐みたいなことを言ってモヤ〜っとするうみ子さんが、どう変わっていくのかも気になりますト：自虐はついしちゃいますよね〜。最初から、「私も若者と一緒です、壁なんかありません」って言えるのって、カッコいいですけど、誰にでも言えることじゃない。だから最初の自虐は大目に見てほしいというか（笑）ト：自虐や遠慮から入っていくんだけど、段階を踏みながら、うみ子さん自身の中にあるエイジズムみたいなものと戦っていくのかなと思いますト：それこそ、うみ子さんが映画の世界に進むひと押しとなった海くんがちょこちょこと、年齢からくる重みを軽くしてくれていてト：いい相棒というか、バディに、出会えているのは本当に素敵だなと思いましたね M：そんなバディが、これからうみ子さんの周りに増えていくといいな…と思いつつですね。2巻の発売が待ちきれずに、連載されている「ミステリーボニータ」で続きを読んだのですが、嵐の予感が… ト：え… M：周囲からの“年相応”な偏見の押し付けを感じる場面があるんです。これが、自分の中にあるエイジズム以上にキツいように私は感じて、そしてうみ子さんがアウトレイジ… ト：え？ M：世間に流れるエイジズムとも対峙しなきゃなのかと、ソワソワが止まらないですト：早く2巻を… M：早く3巻を… 「海が走るエンドロール」たらちねジョン月刊コミック誌「ミステリーボニータ」で連載中。2月16日に2巻が発売予定。 ©︎たらちねジョン／秋田書店／2021

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