便が“ミイラ化”(!)する便秘。その危険性とは?|なんでも相談室「今日はどうされましたか?」#30
〈隔月10日更新!〉更年期に伴う不調や体の変化、介護との向き合い方まで、40代以上の女性が、今と未来を安心して生きるための“体・心・人生の相談室”。毎回、1つの悩みをテーマとして取り上げ、その分野の専門家がお答えしていきます。
- 相談員 工藤あき
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一般内科医、消化器病専門医。美肌とアンチエイジングのための腸活×菌活エキスパートとして、テレビや雑誌等のメディアに出演する他、書籍『キレイな人になる腸活美容』(KADOKAWA)などの監修も行う。
- 助手 清水 尚美
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元美容メディア編集者。生まれてこの方、便秘薬とは無縁のスッキリライフ!ただ、ストレスにさらされる繁忙期や、野菜やフルーツが少なめの食生活が続いた時、旅行中などはお腹の張りが気になる…。
本日のお悩み
気づけば慢性的に便秘がち。放っておいても大丈夫?
仕事や家事、介護で慌ただしいので、ついトイレに行くのを我慢していしまいます。それが気づけば便秘がちになり、今まで毎日お通じがあったものが3日でないこともしばしば…。ただか便秘だと思っていますが、放っておいてもいいものでしょうか?
便秘=ミイラ化した“ミイラ便”!?

清水“便秘がち”といっても、そもそもどの程度で便秘と判断されるのでしょうか?

工藤実は日本消化管学会がガイドラインを出していて、そこでは「便が大腸内に滞ることによる様々な不快感や不調(便が硬くなり出づらい、排便回数が少ない、残便感、直腸肛門の閉塞感など)」を便秘と定義しています。

清水1日に一度が目安、など、回数は規定されていないんですね。

工藤そうなんです。腸の長さや状態に個人差がありますから、毎日出る方もいらっしゃれば、腸が長いゆえに1週間に一度という方も。“正常な排便”は人それぞれに違います。ですから、便秘かどうかを自分で判断する方法としては、これまでの平均的な排便回数から極端に減ってしまっているかどうか、そして、排便の際に便が硬く“ミイラ化”していないかどうかを確認するのが確実だと思います。

清水ミ、ミイラ化…!?

工藤通常、摂取した食物は胃で消化され小腸・大腸を通り、最終的に排出されていきますね。そのプロセスの中で小腸・大腸に留まる時間が多いと、水分などがどんどん抜けていき、ミイラのようにカチカチで出しにくい便になってしまうんです。

工藤ベストなのは、するっとバナナ型の便が排出できること。一方で、うさぎのフンのようにコロコロな便も、その人にとって適切な排便回数に至っていない人に多い形ですね。こういった便の状態に加えて排便しにくい、苦しい、腹痛があるといった症状を伴うと、便秘症と診断されます。
60代以降は、男女ともに便秘リスクが高まる傾向に

清水正常な排便は人それぞれというお話でしたが、年齢や男女差による違いや傾向はあるものでしょうか?

工藤20代〜30代では女性の方が便秘の割合が多い傾向にありますね。女性ホルモンのプロゲステロンが大腸の便を押し出す動き(ぜんどう運動)を抑える作用があるので、このプロゲステロンの分泌が活発になる排卵から月経までの時期に便秘になりやすいです。しかし、60代以降では男女差はほぼありません。男女ともに加齢に伴い便秘の方が増えていく傾向があります。

清水年齢を重ねると便秘になりやすくなるというのは、なぜなのですか?

工藤加齢で足や腕の筋肉が落ちるのはよく知られていますよね。実は腸にも筋肉があり、その筋肉が落ちることでぜんどう運動も弱まっていくのが、便秘になりやすくなる主な原因です。あとは、生活習慣病等の影響で血管が硬くなってしまうと腸にいく血流も悪くなり、腸の働きが落ちてしまっている場合も考えられます。

清水便秘になりやすくなるとはいえ、“たかが便秘”と思いがちですが…、60代以降の方の便秘は何かリスクがあるのでしょうか。

工藤その年代の方々にとっては排便時の“いきみ”がリスクになり得るのかなと思います。いきむことは血圧の急激な変動に繋がりますから。

工藤例えば、いきむことで血管の収縮を司る迷走神経が刺激されて血圧が急激に上昇、そして排便後に急激に低下することが、ふらつき・めまいなどの症状を引き起こすことがあります。

清水それで転倒したら危ないですね…。

工藤そうなんです。他には、稀な例かもしれませんが、血管に動脈瘤などのコブがある場合は、血圧の上昇でその動脈瘤が破裂すると恐れがないとは言い切れません。動脈瘤の破裂が心不全をきたすことも。また、統計学的には大腸がんに罹患されている方は便秘が多いという話もあります。便秘と大腸がんの繋がりは断定できませんが、便秘を解消するにこしたことはないと思います。
毎日のマッサージと食生活が、滞りがちな腸の動きを助ける

清水便秘を解消するために普段からできることを、教えてください!

工藤まずは、マッサージ。自分でできて、副作用が出る可能性は低いのでおすすめです。私の患者さんでも、マッサージの効果を感じている方は多いですよ。
\工藤先生おすすめ!/
便秘解消をサポートする
腸のマッサージ法
マッサージをする場所は…
マッサージする場所は大腸90度に曲がっている隅の角。
①お腹が少し凹むくらいの力加減で押す。
②「の」の字を描きながら大腸の隅を伸ばすようにマッサージする。

工藤食事面では、便に水を含ませて絡め出してくれる水溶性の食物繊維を摂るようにしましょう。めかぶやわかめなどの海藻類、みかん、キウイ、サツマイモ、春菊、カボチャなどが挙げられます。加えて、オリーブオイルやオメガ3などの良質な油も◎。脂っこい食べ物を食べるとお皿がヌルヌルに汚れますが、同じようなことが腸の中でも起きるので、油が腸をヌルヌルにして便を出しやすくしてくれますよ。

清水マッサージと食べ物、体の内と外からのサポートが大切なんですね。

工藤そうですね。あとは、トイレに行きたくなった時にちゃんと行くことを心がけましょう。食べると腸が反応して排便を促す「胃結腸反射」は、朝が最も起きやすいと言われています。ですので、やはり朝ごはんは一定量、必要な栄養を満たせるぐらいは食べる方がいいですね。そして胃結腸反射が起きた時は、忙しいからとトイレに行くのを先延ばしにしないようにしましょう。
快便はQOLの高さにも関係が!? 自分をいたわる方法の1つとして、リラックストイレタイムを

工藤私の患者さんの中には、長らく便秘に悩んでいたけれども子ども優先で生活していて、病院にかかれなかったという方がいらっしゃいました。自分のことは後回しにされる方が多いようですが、排泄は生きていく上で欠かせないこと。便秘が続けば腸内環境が悪化し、それが肌荒れや肌のくすみに影響してしまいます。

清水肌の調子が良くないと、なんだかメンタルも上がらないですね…。

工藤そうなんですよ。ある文献では、日々快便で過ごされている方は、今の生活や体調に満足しており、QOLが高いという指摘がされていました。排泄は心身ともにごきげんでいるために重要な要素。体から不必要なものを出し、自分をいたわることだと思っていただけるといいですね。
本日の学び
これまで便秘を自覚したことがない私ですが、朝は慌ただしくて出勤前にお手洗いに行けなかったりして、出ない日が1日でもあったりすると不快感を感じてしまいます…。そういえば、今までは「トイレ」という場所をあまり重要視していなかったなと思い、今の家に引越してからトイレの内装にこだわってみました! お気に入りのトイレタリーに変えたり、柴犬のカプセルトイや好きな画家のポストカードを飾ったり。家族がいる方にとっても、トイレは1人で過ごす唯一の場所。リラックスできる空間に整えるのもおすすめです♪(清水)
監修/工藤あき
編集/間野加菜代(Cumu)
イラスト/itoaya






















