
魅惑の場所、スナック|なにげなWeekly
オルビス社員のひなたと靴下柄の相棒猫・くつしたさんの凸と凹な毎日。うっかり!が発生してちょっと残念な日だって角度を変えれば愛おしくなる。そんな瞬間を捉えた、ほぼノンフィクションなお話を、週替わりでお送りします。
プロフィール紹介
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ひなた(左)
オルビス社員歴いつの間にか5年目。くつしたさん曰く、「なんでも器用にこなせるのに、時々とんでもなく不器用な動きを見せる不思議なニンゲン。」家に着くとまっさきに靴下を脱いでしまう。くつしたさん(右)
靴下柄がチャームポイントなひなたの相棒猫。御年5歳。趣味はひなたの見守りとニンゲン観察。時折、達観したそぶりと鋭い考察を見せる。ひなたが脱ぎっぱなしにした靴下をときどき片づけてあげる。
魅惑の場所、スナック
こんにちは。ひなたです。
ひょんなことからスナックに通い始めて7年ほどになります。学生時代、研究テーマを探してあちこち放浪していた私は、ある離島のシャッター街のなかで煌々と輝くネオンの看板に吸い寄せられました。
どんなに田舎であっても、どんなに人がいなくても、なぜか生き残るスナック。入ったその店で熱く人生について語っている漁師さんたちの輪に入れてもらい、そんなに熱い話をしているのにその人たちが名前も知らない初対面であることに慄き、ミラーボール*の下で熱唱するその空気にすっかり酔ってしまいました。
東京に戻ってからもスナックを開拓し始め、自分の祖母と年齢が近いベテランママがいるお店に通い、スナックに立ち寄る人々の観察をするように。同年代でスナックに行ったことがあるという人は少なく、当然他のお客さんは私よりも年上で、はじめはその場の空気を乱してしまわないかドキドキしたものですがその感覚でさえ新鮮なことでした。
旅先でもスナックに立ち寄るようになり、青森のそっくりな双子のママがいるお店、奄美大島の踊りが上手なお姉さんがいるお店…いろいろなところへお邪魔しましたが、スナックへ行くと驚くほどその土地の解像度が上がります。
店主を「ママ」と呼ぶことにもあらわれるように、スナックはお店だけどどこか家のような匂いがします。家主であるママがその空間のルールであり、家ごとに空気もやってくる人も違う。それゆえに一見さんは時に入りにくく感じるかもしれません。でも、その半分閉じられたような空間が中の人を安心させ、またここに“帰りたい”と思わせる。
新しいお店のドアを開くとき、ちょっとの緊張とワクワクで笑みがこぼれるようになったらもう怖いものはありません。あなたのホームになるお店も、きっと近くでひっそりと待っています。
*すべてのスナックにミラーボールがあるわけではなく、この店が特殊だったと思われる。なお、なぜかミラーボールは2個もありキラキラというよりギラギラだった。
オルビス社員のひなたが、ほぼノンフィクションなお話を週替わりでお送りします。次回の更新は6月11日(水)。テーマは「ときめきマルジナリア」です。
イラスト/タソカレー
編集/間野加菜代(Cumu)
文/神谷日向子
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