女性ホルモンが減ると体臭がキツくなるってホント? |なんでも相談室「今日はどうされましたか?」#27
〈隔月10日更新!〉スキンケアに関する疑問から、カラダのお悩み、生活習慣のことまで、みなさんが気になることならなんでもOKの相談室。毎回、1つの悩みをテーマとして取り上げ、お答えしていきます。
- 相談員 馬渕知子
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「マブチメディカルクリニック」院長。専門は内科、皮膚科、分子整合栄養学、アンチエイジング医療。現在は食糧学院の学院長、東京栄養食糧専門学校の講師も務め、人間の体を総合的にサポートする医療を推進する。
本日のお悩み
すれ違いざまにニオう体臭…。私は大丈夫?
通勤時にいろんな人とすれ違いますが、時々むわっとしたニオイが通り過ぎることがあります。「加齢臭」なんて言葉もありますし、女性はホルモンバランスの変化で体臭がキツくなるという話も…。自分の体のニオイを知る方法やどうケアすればいいかなどを知りたいです!
人間の体から発する“ニオイ”とは?

清水口臭、頭皮臭、ワキのニオイ、 足のニオイ…。考えてみると、人の体っていろんな部位からニオイを発しますよね。

馬渕そのニオイの正体は何かというと、汗そのもののニオイに加えて皮膚の垢や皮脂、汗に含まれる脂などが皮膚に存在する常在菌によって分解された時に発生するガス。体の部位によって出る汗と皮脂の量・質が違ってきますので、場所によってニオイに差があります。
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汗の種類とニオイのメカニズムはこちらをCHECK!
\あのニオイの原因は?/
頭皮のニオイ
頭皮、首の付け根から多く出る皮脂が原因。脂っぽいニオイを発する。
ワキのニオイ
アポクリン汗腺から分泌される汗に含まれるタンパク質、脂質、脂肪酸、ミネラルなどが原因。皮膚の常在菌によって分解されることで独特なニオイになる。重度な状態は腋臭症(わきが)とも呼ばれ、指摘されている要因は体質や体調など。治療方法は生活習慣の見直しから外科手術まで様々あるため、医療機関(皮膚科・形成外科)で診てもらうことができる。
足のニオイ
常在菌が汗、皮脂、古い角質などを分解する際に、イソ吉草酸と呼ばれる特殊な酸が発生。これが鼻にツンとくるような強めのニオイの元。
口臭
歯周病、虫歯、唾液の量が少ないドライマウス、食べかすをエサに口内の菌が繁殖することが原因。また、便秘気味など腸内環境が悪いと、内臓から口までニオイが上がってくることも。口臭についてもっと知りたい方は、末尾の関連記事へ。
デリケートゾーン
実はアポクリン汗腺が多い箇所。ワキガと同様にアポクリン汗腺から分泌される汗が分解されることでニオイを発する。ムレやすく雑菌も繁殖しやすいため、ニオイがキツくなる場合も。デリケートゾーンについてもっと知りたい方は、末尾の関連記事へ。

馬渕デリケートゾーンのニオイに関しては、女性は生理周期によるホルモンバランスの変化も関係してきますよ。例えば、膣は基本的に酸性よりの弱酸性に保たれ雑菌が入ってこないようになっていますが、妊娠可能な時期には、精子が死なないようにその弱酸性のガードを下げています。

清水ということは、雑菌が繁殖しやすくニオイやすい状態に…?

馬渕その通りです。加えて、ホルモンバランスの変化はデリケートゾーン以外にも、全身のニオイに関連しているんですよ。
女性ホルモンの減少とともに、女性の加齢臭が始まる?

馬渕女性は年齢を重ねると女性ホルモンが減っていきますね。すると体の中では、男性ホルモンの割合が増えていきます。男性ホルモンは男女問わず存在する性ホルモンで、骨や筋肉の健康を保つためには必要なもの。でもその割合が増えることで、男性の加齢臭に近いニオイを発する可能性が高くなるんです。

清水加齢臭…! 更年期を感じ始めたら、体のニオイも気にかけるとよさそうですね。

馬渕そうですね。例えば、ホットフラッシュでかく汗はアポクリン汗腺から出る割合が多めになる傾向が。アポクリン汗腺から分泌される汗にはタンパク質や脂質などが含まれていて、ニオイが強くなりやすい傾向にありますから、それも体のニオイが気になる要因になりますよ。

清水そういえば、ミドル脂臭という言葉もよく聞くのですが、加齢臭とミドル脂臭はどう違うのですか?

馬渕まず、ニオイ成分が違います。加齢臭の元はノネナール という物質。発生する原因は汗や皮脂が常在菌によって分解されることなのですが、年齢を重ねてくると皮脂の質が変わってきます。具体的には、体内の抗酸化力が低くなるため、酸化された脂である過酸化脂質が汗に多く含まれるようになり、この過酸化脂質からノネナールが発生するんです。

馬渕女性ホルモンは体内の抗酸化作用を強くしてくれる働きもありますから、それが弱くなると、ノネナールが発生しやすくなるでしょう。

清水更年期以降、体のニオイが変わりやすくなるということですね。

馬渕一方で、ミドル脂臭のニオイ成分はジアセチルという物質。汗に含まれる乳酸と脂が分解されることで発生します。汗をあまりかかない人に多い傾向があると思いますね。汗が出ないと乳酸が溜まりやすく、ジアセチルが生成されやすくなりますから。“ミドル”(中年)といわれていますが、体質や生活習慣次第で、年齢関係なく起きることも特徴です。
ニオイ対策のポイントは、常在菌と食生活、そして“いい汗”

馬渕加齢臭もミドル脂臭も、汗や皮脂などを常在菌が分解することで発生しますから、基本的な対策は肌を清潔にすること。ただし、洗いすぎないようにしましょう。常在菌はバランスが重要なんです。洗いすぎてしまうと乾燥しますし、汗や皮脂が十分に分解されないことでニオイが強くなることも考えられます。

清水加齢臭に限っていうと、体の抗酸化力が落ちることが大きな原因ということは、インナーケアで抗酸化力を高めるのも良さそうですね。

馬渕とてもいいですね。その点では、緑黄色野菜に含まれるビタミンA・B・Cを積極的に摂るのがおすすめです。また、女性ホルモンをサポートするような栄養素を補うことも◎。抗酸化力を高めるだけでなく、ニオイ対策そのものに食生活はとても重要なんですよ。

清水それはなぜですか?

馬渕ニオイの発生源となる汗の原料は血液だからです。食べ物は消化されると栄養素は血液に流れ込み、全身を巡ります。その血液に脂がたっぷり含まれているとしたら…。

清水脂っぽい汗が出そうですね…。食生活の改善はミドル脂臭対策にもなりそうです。

馬渕そうですね。ミドル脂臭の場合は乳酸の排出もカギになります。そのためにはサウナや運動で健康的ないい汗をかくことを習慣にするのがおすすめですよ。
もし、ニオイが気になったら…

清水自分のニオイって、自分でわかるものですか?

馬渕残念ながら、わからないと思います。例えば、しばらく外出して家に戻ると“家のニオイ”を感じることがありますよね。でも数分経つと気にならなくなっていませんか? 嗅覚はそれだけ順応性が高いんです。

清水そんな(涙)。何か方法はないのでしょうか。

馬渕そうですね…。1日着た下着や服を袋に入れて閉じ、しばらく待ってから、一気に開けて中のニオイを嗅いでみる。服に移った自分のニオイが袋の中で濃縮されて、わかりやすいかもしれません。

馬渕体のニオイに敏感になることは、健康面でもプラスになると思います。先ほど、汗の原料は血液であるという話をしましたが、例えば糖尿病ですと、糖が代謝されずに血液に残るため、甘酸っぱいような独特なニオイを体は発します。

清水体で何が起こっているのか、ニオイが知らせてくれるんですね。

馬渕自分では気づきにくいかもしれませんが、もし身近な方が以前とは違うニオイを発しているようであれば、「体調は大丈夫?」と声をかけてみるのもいいかもしれませんね。
本日の学び
“食事と運動で汗の質を良くしていく”ことが重要だというのが、新しい気づきでした。そういえば忙しくて運動もできず、ジャンクフードを食べてしまったときは少しニオイが違うかも…と思い返したので、繰り返さないように気をつけたい…!それと並行して、汗をかいたあとのケアをどうするのかもポイントですね。肌の汗はできるだけ早くふき取る、汗がついた衣服は当日中に洗うなど、コツコツ実践していきたいです。自分も身近な人もここちよくなれるようなニオイ対策を心がけたいと思います!(清水)
監修/馬渕知子
編集/間野加菜代(Cumu)
イラスト/itoaya
























