老眼のメイクしづらさ、アートメイクで解決する?|なんでも相談室「今日はどうされましたか?」#31
〈隔月10日更新!〉更年期に伴う不調や体の変化、介護との向き合い方まで、40代以上の女性が、今と未来を安心して生きるための“体・心・人生の相談室”。毎回、1つの悩みをテーマとして取り上げ、その分野の専門家がお答えしていきます。
- 相談員 平田雅子
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美容皮膚科「私のクリニック目白」院長。皮膚科医として10年にわたり大学病院で経験を積む。患者とゆっくり向き合える場所を作り、診察を通して家事・仕事・子育てに頑張る女性を応援したいという思いで独立し、開業。男性も含め、多くの受診者が訪れる。
- 助手 清水 尚美
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元美容メディア編集者。メイク上手だった60代の母が、最近、老眼ゆえのメイクのしづらさを訴えるように。母は予定のあるなしに関わらず、洗顔後はメイクをするのが日課なので、毎日のストレスになっているのでは…。何かいい解決策があればと思っている。
本日のお悩み
老眼で眉の形が崩れがち。アートメイクが気になっているけれど…。
細かい部分がぼやけてしまって見えづらく、メイクに時間がかかるようになりました。よく見えないまま描いているせいか、眉が歪んでいると娘に指摘され…。同い年の友人は最近、眉をアートメイクにしてラクになったという話を聞いて気になっていますが、実際どうなんでしょうか。
誰もがいずれ経験する、“年齢による体の変化でメイクがしづらい”問題

平田クリニックの受診者からは、老眼で眉が上手に描けない、アイラインが引けないとよく聞きます。手が震えてしまうという声もありますね。中には脳梗塞を経験されて手が自由に動かせないという方もいらっしゃいます。

清水更年期以降、手指が動かしづらくなったという話を聞いたこともあります。せめて眉だけでも、自分で描かずともきれいな形でいられたら助かりますね…。そうなると、アートメイクなら自分でしなくてもいいですし、洗顔しても落ちませんよね

清水落ちないのはうれしいけれど、自然な仕上がりにできるのでしょうか?

平田昔のアートメイクの眉は、縁取りをした部分を塗りつぶすような仕上がりでしたが、今は技術が進んでいます。眉であれば毛を1本ずつ描き、毛流れを表現して立体感を出す“3D眉”と呼ばれる施術が出ていますよ。また、自分で眉メイクができるくらいの薄い仕上がりにすることも可能です。

清水どれどれ…(インターネット検索をしながら)。あ、ありました! その3D眉の施術にパウダー状の色素を入れてぼかす“4D眉”というものもあるんですね。

平田眉だけでなく、アイラインや唇に色を入れるアートメイクもありますよ。

平田ただ、技術は進化しても「麻酔クリームを塗り、針で皮膚に傷をつけて色素を注入する」という医療行為に変わりはありません。痛みを強めに感じる方がいるでしょうし、他の部分を傷つけないよう施術者の技術も問われます。
MRI検査が受けられない? アートメイク前に知っておきたいこと

清水アートメイクを受けるか検討する際に、知っておくべきことはありますか? アートメイクをしているとMRI検査はできないと聞いたことがありますが…。

平田昔は使用する黒の色素に鉄分が多く含まれていたので、MRI検査の磁場と反応して強い熱を発生させてしまうことから注意が必要でした。現在は一般的に金属の含有量が少ない色素が使われていますから、MRI検査は受けられますよ。

清水そうなんですね!

平田唇にアートメイクをされた方で、検査中は何ともなかったけれども翌日に唇が腫れたというケースは聞いたことがあります。冷やして治ったとのことでしたが、アイラインや唇など皮膚が薄くて繊細な部位は人によっては過敏に反応するかもしれません。

清水他に、注意しなければならないことはありますか?

平田一番心配なのは、感染症です。出血するかしないかくらいの深さで皮膚を傷つけるわけですから、施術日から数日間は、なるべく触れない、サウナ・プール・公衆浴場は控えるなど、雑菌が入らないよう注意して過ごす必要があります。施術を受けた医療機関から軟膏などを処方されると思いますので、医師の指示をしっかり守るようにしましょう。

平田そのため、そもそも感染症のリスクが高い方、感染症に罹患している方、施術部位に疾患をお持ちの方は受けることができません。また、金属アレルギーがある方、傷跡が残りやすいケロイド体質の方は必ず医師に相談していただきたいです。
施術は必ず、医療機関で。施術例のチェックができればベター

清水アートメイクを受ける施設は、どうやって決めたらよいのでしょうか。

平田まずは医療機関、または医療機関と連携している医療資格のある施設であること。そして、ご自身の望むアートメイクの施術例が、医院のWebサイトや口コミサイト等で見ることができればベターです。

清水眉だったら、自分の好みのデザインが施術例にあれば、仕上がりのイメージがつきやすくて、相談もしやすそうですね。

平田あと、シニア世代の方でしたら、シニアのアートメイクを手がけているかどうかもチェックポイント。たるみやシワによる見え感の変化を考慮して施術をする必要がありますから、自分と同年代の方の施術例があるかどうかを確認すると良いと思います。
アートメイクは“いつもの自分”でいるための選択肢

平田私自身がアートメイクの有用性を感じたのは、東日本大震災の時でした。診療の際にいろんな年代の女性たちと話をする中で、眉を描けるものがほしいと言われたんです。おしゃれというよりも、アイデンティティのため、個人特定のために眉を描きたいというニュアンスを感じました。いつもの自分でいるための、尊厳を保つための眉というか。

清水状況が変わってもこれまで通りの顔でいられることが、メンタル的にもどんなにいいかは容易に想像できます。

平田そうなんです。手が動かしづらい、目が見えにくいといった状況の場合でもメイクを諦める必要はない、選択肢があるということは知っておいてもいいと思います。メイクの煩わしさなどから解放されて、ご自身が心地よく毎日を過ごせるなら、アートメイクを考えてもいいかもしれませんね。ただし、適切な医療機関を選ぶ、金属アレルギーや感染症など施術に関わるリスクを確認するといったことに留意して、検討してくださいね。
本日の学び
アートメイクはもはや一部の美意識が高い人のためのものではなく、自分が自分らしくいられるためのツールなんですね。先生の「尊厳」という言葉が印象的でした。心身ともに大変な時などは身だしなみを整えることにうしろめたさを感じることがあるかもしれませんが、自分が必要だと思ったら「尊厳」を守る、自分の負担を軽くするためのひとつの選択として、アートメイクがあってもよいのかもしれません。(清水)
監修/平田雅子
企画/清水尚美
編集/間野加菜代(Cumu)
イラスト/itoaya






















